オンライン採用面接に「AI応募者」?
AIなりすましから考える生成AIのリスク
こんにちは、ソリューションSecの木村です。
生成AIというと、文章作成や情報収集、プログラミングなど、仕事を効率化する便利なツールというイメージが強いと思います。
しかし、AI技術の進化とともに問題になっているのが、AIの「悪用」です。
2026年9月、日本国内の企業が実施したオンライン採用面接で、AIを使って別人になりすましているとみられる応募者が現れ、話題となりました。
今回はこの事例をもとに、AIによるなりすましがどのように行われるのか、そして私たちはAIで作られた画像や動画をどのように見抜けばよいのかを考えてみます。
① 事件の概要
今回話題となったのは、中途採用のオンライン面接です。
面接には男性の姿をした応募者が参加し、自身の経歴について流暢に説明していました。
一見すると普通のオンライン面接ですが、面接担当者は、応募者の映像や受け答えにさまざまな違和感を感じます。
その後のやり取りから、AIを使って別人になりすましているのではないかと判断し、面接を終了しました。
この様子の一部がSNSで公開され、「AIが面接に来た」として大きな話題になりました。
② 発覚に至った経緯
今回のケースで興味深いのは、特殊なAI検出システムによって発覚したのではなく、面接担当者が感じた複数の「小さな違和感」がきっかけだったことです。
違和感1 会社名を正しく読めなかった
会社名は「KOWRO(コヲロ)」ですが、応募者はこれを正しく読むことができませんでした。
通常の応募者であれば、面接前に応募先の企業名や事業内容を確認している可能性が高いため、ここで最初の違和感が生まれました。
違和感2 声と口の動きが合っていない
さらに大きな違和感となったのが、
「話している音声と映像の口の動きが一致していない」
という点です。
面接官がこの点を指摘すると、応募者は通信の遅延の可能性を説明しました。
しかし、単純な通信トラブルとは異なる不自然さが感じられたといいます。
違和感3 質問への回答に独特の「間」がある
面接官が質問してから回答が返ってくるまでに、不自然なタイムラグがありました。
生成AIを使ってリアルタイムに回答を生成している場合、
質問を認識する
↓
AIが回答を生成する
↓
音声を生成する
↓
映像に反映する
といった処理が必要になるため、通常の会話よりも回答までに時間がかかる場合があります。
違和感4 日本語の使い方が不自然
決定的な違和感の一つとなったのが、自分自身について「ご自身」と表現したことです。
文章だけを見ると小さな間違いですが、人間同士の自然な日本語の会話では、自分自身をこのように表現することは通常ありません。
こうした、
・不自然な言葉遣い
・口の動きと音声のズレ
・回答までのタイムラグ
・視線や表情の違和感
などが重なり、面接担当者はAIによるなりすましを疑い、面接を終了しました。
③ 悪意で利用されているAIを見抜く方法
では、私たちはAIによって作られた画像や動画をどのように見抜けばよいのでしょうか。
AIの生成精度は急速に向上しているため、「見た目だけで100%判断する」ことは難しくなっています。
そのため、一つの特徴だけで判断せず、複数のポイントを確認することが重要です。
AI画像を確認するときのポイント
AI生成画像では、細かな部分に不自然さが残る場合があります。
例えば、
・文字やロゴがおかしい
・背景の文字が意味不明になっている
・アクセサリーなど細かい物体の形状に矛盾がある
・光の方向や影が不自然
・背景の物体が途中で変形している
・同じ模様が不自然に繰り返されている
といった点です。
ただし、生成AIの性能向上によって、以前よく言われていた「指の本数がおかしい」といった特徴だけでは判断できないケースも増えています。
「AI画像には必ずこの特徴がある」と考えないことが重要です。
AI動画・オンライン面接を確認するときのポイント
動画の場合は、静止画とは違ったポイントがあります。
特に確認したいのが、
・口の動きと音声が合っているか
・顔と首の境界が不自然ではないか
・顔を横に向けたときに映像が崩れないか
・表情の変化が自然か
・肌の色や映像の解像度が途中で変化しないか
・質問してから回答するまでに不自然な遅延がないか
といった点です。
「顔の前に手を出してください」も一つの確認方法
オンライン面接などでは、その場でランダムな動作をお願いする方法も考えられます。
例えば、
「顔の前に手を出してください」
「顔を左右に向けてください」
「手に持っている物をカメラの前に移動してください」
などです。
顔の前に物体が重なることでAIの処理が追いつかず、顔や手の境界部分が不自然になる可能性があります。
まとめ
生成AIは、仕事を効率化したり、新しいアイデアを生み出したりする非常に便利な技術です。
一方で今回のように、
「他人になりすます」
という目的にも利用できてしまいます。
そしてAIの性能が上がれば上がるほど、「映像が自然だから本物」「声が自然だから本人」という判断は通用しにくくなっていくでしょう。
しかし、AIを怖がって使わないのではなく、AIで「できること」と「悪用される可能性」の両方を理解したうえで、適切に活用していくことが重要だと感じます。




