開発者はAIを”信じて”はいない ― Stack Overflow 2026調査が示す「条件付きの信頼」
こんにちは、AIイノベーションSecの丸山です。
AIのコーディング支援を使っている開発者の73%は、毎日それを使っています。ところが、AIの答えを「そのまま使う」と答えた人は、9.6%しかいませんでした。
これは、Stack Overflowが2026年10月6日に公開した、年次の開発者調査の結果です。毎日のように頼っているのに、ほとんどの人は答えを鵜呑みにしていない。この一見ちぐはぐな数字に、いまの開発者とAIの距離感がよく表れていると感じました。
この記事では、この調査を中心に、開発者がAIをどう使い、どこまで信じているのかを読み解きます。先に結論を書くと、AIは”信じる道具”ではなく、”確かめながら使う道具”になった、というのが私の読みです。
1. もう「使うかどうか」の段階ではない
まず、調査の規模を押さえておきます。Stack Overflowの開発者調査は、今年で16回目です。2026年6月23日から8月5日にかけて回答を集め、169か国から30,903件の有効回答がありました。
AIの利用は、すでに日常になっています。コーディング支援やエージェントの利用者のうち、73.0%が毎日使っていました。AIに対する見方も、回答者の62%が「少なくともやや好意的」です。
別の調査も、同じ傾向を示しています。JetBrainsが1万5千人を超えるプロの開発者に行った調査では、2026年5〜7月の時点で、90%が週1回以上、68%が毎日、職場でAIコーディングエージェントを使っていました。
つまり、開発の現場では、AIを「使うかどうか」はもう論点ではありません。問題は、使っている人たちがAIをどこまで信じているかです。
2. それでも「信じて任せる」人は少ない

Stack Overflowの調査には、AIの出力をどの程度信頼するかを聞いた設問があります。回答者14,304人の内訳は、次のとおりです。
- 簡単に確かめられるときは信頼する:48.0%
- 多くの作業では信頼するが、重要な判断には使わない:16.3%
- 低リスクの作業に限って信頼する:16.3%
- ほとんどの作業で信頼しない:12.3%
- 重要な判断も含めて信頼する:6.6%
最も多いのは「確かめられるときだけ」で、約半数です。一方、重要な判断まで任せる人は6.6%にとどまりました。経験1〜5年の回答者に限ると、この割合は4%まで下がります。
能力の評価も、慎重です。AIが複雑な作業を「とてもうまくこなす」と答えた人は16.0%で、最も多かったのは「良いが、十分ではない」の38.8%でした。
この結果を、Stack Overflowは「懐疑から条件付きの受け入れへ」と表現しています。前年の2025年調査では、AIの正確さを疑う人(46%)が、信頼する人(33%)を上回っていました。今年は、利用がほぼ飽和に達し、開発者がAIとの付き合い方に適応した、という解釈です。
ただし、2025年と2026年では設問が違います。2025年は「正確さをどの程度信頼するか」、2026年は「どんな条件なら信頼するか」を聞いているため、数字を並べて「信頼が上がった」と言うことはできません。
また、この調査は、stackoverflow.comや公式ブログ、メールリストを通じて回答を募っています。回答者がStack Overflowをよく使う人に偏っている可能性がある、という点はフェアに押さえておきたいところです。
——ここまでだと、「結局AIは信用されていない」という話に見えるかもしれません。でも、面白いのはこの先です。信じきっていない人たちが、それでも毎日AIを使えているのはなぜか。データには、その答えのヒントがありました。
3. データから見える「条件付きの信頼」の3つの型

私はこの使い方を、「条件付きの信頼」と呼ぶことにします。調査から読み取れる型を、3つに整理しました。
① 動かして確かめる
AIの答えを使う前に何をするかを聞いた設問(13,162人)では、「ローカルで実行してみる」が76.5%、「コードベースの文脈と照らし合わせる」が63.9%、「テストやセキュリティへの影響を確認する」が53.0%でした。そのまま使うのは9.6%です。
多くの開発者は、AIの答えを「読んで納得する」より先に、「動かして確かめる」ことで信頼しています。2章の「確かめられるときは信頼する」48.0%と、ちょうど対応する行動です。
明日からできることとして、AIに頼むときは、確かめ方もセットで決めておくのがおすすめです。たとえば「この関数を書いて」と頼むなら、どの入力で何が返れば正解かを先に決めておきます。確かめ方が決まっていれば、AIの答えを信じるかどうかで迷う時間が減ります。
② 任せる範囲を分ける
同じ調査で、AIを使っている作業を聞いたところ(12,547人)、「慣れた領域のコード生成」は69.3%でした。一方、「本番システムのデプロイ・運用・障害対応」は19.9%にとどまり、36.0%は「使っておらず、使う予定もない」と答えています。
開発者は、AIを一律に使っているわけではありません。間違えても自分で気づける場所ではよく使い、間違いが大きな影響につながる場所では使わない、という線を引いています。
もっとも、「慣れていない領域のコード生成」も56.0%と半数を超えています。線引きは「慣れているかどうか」だけで決まっているわけではなさそうです。差がはっきり出ているのは、本番の運用に関わる作業でした。
明日からできることは、自分の作業を「間違えたらすぐ気づける作業」と「気づくのが遅れる作業」に分けてみることです。前者からAIに任せていけば、確かめる手間と得られる効果のバランスが取りやすくなります。
③ 確かめ方を個人任せにしない
ここが、いちばん課題が見える部分です。組織でのAIの使われ方を聞いた設問(13,167人)では、「ほぼ任意で、個人に任されている」が29.7%で最多でした。「承認済みのツールと使い方の指針がある」は24.0%です。
一方で、AIが生成したコードや技術的な回答を評価するとき、出典の表示を「重要」「とても重要」と答えた人は78.7%にのぼります。開発者は確かめる材料を求めているのに、その確かめ方が個人の判断に委ねられている職場も少なくない、ということです。
明日からできるのは、チームで「AIの出力をどう確かめるか」を一度言葉にしてみることです。「テストが通ったものだけ採用する」「本番に関わる変更は人がレビューする」といった1〜2行のルールでも、確かめ方が人によってばらつくのを防げます。
おわりに ― 「信じる」より「確かめられる」を
今回の調査が示していたのは、開発者がAIを信じていない、という単純な話ではありませんでした。毎日使いながら、確かめられる範囲で信じる。その「条件付きの信頼」が、いまの標準になりつつあります。
だとすると、AIを活用するうえで大切なのは、AIを信じる勇気よりも、確かめられる仕組みを先に作ることだと私は考えています。確かめ方が決まっていれば、任せられる範囲は自然に広がっていきます。
私たちが掲げる「AIを使える力に変える」も、こうした仕組みづくりの先にあるものだと思います。来年の調査でこの数字がどう変わるのか、引き続き追いかけていきます。
参考・出典
- Stack Overflow「Stack Overflow’s 2026 Developer Survey Reveals Positive Sentiment Towards AI — but Trust Remains Conditional」(公開日、16回目、重要な判断での信頼6.6%、出典表示78.7%、条件付きの受け入れという解釈)
https://stackoverflow.co/company/press/archive/stack-overflow-annual-developer-survey-ai-trust-conditional - Stack Overflow Developer Survey 2026「AI data」(毎日利用・好意的の割合、信頼の内訳、経験1〜5年の4%、複雑な作業への評価、使う前の行動、用途、組織での使われ方)
https://survey.stackoverflow.co/2026/ai/data - Stack Overflow Developer Survey 2026「Methodology」(回答期間、有効回答数、国数、回答の募集方法)
https://survey.stackoverflow.co/2026/methodology - JetBrains Research「AI Coding Agents: Adoption Trends」(2026年5〜7月、週1回以上90%・毎日68%)
https://blog.jetbrains.com/research/2026/08/ai-coding-agent-adoption-2026/ - Stack Overflow Developer Survey 2025「AI」(2025年の正確さへの信頼:疑う46%・信頼する33%)
https://survey.stackoverflow.co/2025/ai




