文献の音声コンテンツ再生アプリ(音声合成の技術選定から)
専門用語をどう読ませるか。TTSの選定を比較表で示してから作る
専門文献を音声で聴けるアプリのプロトタイプ開発。実装形態とTTS方式を3段階の比較表で検討し、根拠を共有したうえで着手しました。
システム概要
- 業種
- 出版・電子コンテンツ
- システム規模
- プロトタイプは文献一覧・文献詳細の2画面/TTSの実現方式3種・クラウドTTS 3社を比較して選定
- 開発期間
- プロトタイプ版のみ(2025年8月提案〜)
- 費用レンジ
- プロトタイプ開発 100万円〜120万円
- 使用技術
- Laravel/Nuxt.js/クラウドTTS
- プラットフォーム
- Web(プロトタイプ版)※本番はスマートフォンアプリ化を予定
背景・課題PROBLEM
専門文献を、耳で読めるようにしたい
文献コンテンツを音声で聴けるようにするアプリのプロトタイプ開発案件です。技術選定そのものが最大の論点でした。
対象が専門文献であるため、専門用語や数値を正しく読ませる必要がある
日本語と英語が混在する文章をどう扱うか
音声合成(TTS)の実現方法が複数あり、品質・コスト・オフライン対応が大きく異なる
ネイティブアプリとWebアプリのどちらで作るかで、できることが変わる
提案SUGGESTION
- まずネイティブアプリかWebアプリかを比較する
- TTSの実現方法を3種類比較する
- 本件の品質要件で絞り込む
- オンラインTTS内でもさらに比較する
- 音声はファイル化して配信する
まずネイティブアプリかWebアプリかを比較する
閲覧環境・ライセンス・メリット・デメリットを表で整理してご提示しました。
・ネイティブアプリ:オフライン再生、バックグラウンド再生、ロック画面での操作、Bluetoothイヤホンでの操作、プッシュ通知が可能。ただし開発コストが高く、ストア申請が必要
・Webアプリ:開発・運用コストが低く即時反映できるが、オフライン再生が難しく、iOSのSafariではバックグラウンド再生に制約が多い
音声コンテンツの性質上、バックグラウンド再生とイヤホン操作は必須と判断し、本番はネイティブアプリを推奨。そのうえで、プロトタイプはWebアプリとして構築する方針としました。検証したいのは「専門文献をTTSでどこまで正しく読ませられるか」であり、そこにストア申請やOSごとの実装差を持ち込む必要がないためです。プロトタイプは Laravel(サーバーサイド)+ Nuxt.js(フロント)で構築しています。
TTSの実現方法を3種類比較する
・オンラインTTS(クラウドの音声合成API)(品質:◎ 非常に高品質(Neural音声、感情・抑揚あり) / 生成コスト:API従量課金(mp3化すれば1回限り) / 代表サービス:Amazon Polly、Google Text-to-Speech)
・オフラインTTS(ローカルエンジン)(品質:○ エンジンによるが高品質化傾向 / 生成コスト:無料または買い切り / 代表サービス:VOICEVOX、OpenJTalk)
・内蔵TTSエンジン(OS標準)(品質:△ やや機械的 / 生成コスト:無料 / 代表サービス:Android / iOS 標準)
本件の品質要件で絞り込む
イントネーション、専門用語・数値の読み、日本語と英語の混合、音声の男女切り替え、レスポンスという本件固有の観点で再度比較。専門用語はオンラインTTSならSSMLで、オフラインTTSならフリガナタグで対応でき、内蔵TTSは機種依存でバラバラになることを示し、オンラインTTSが最適と結論づけました。
オンラインTTS内でもさらに比較する
Amazon Polly / Google Text-to-Speech / Azure AI 音声について、最大長・辞書機能・料金形態を比較。専門用語の読み間違いを補正するカスタム辞書機能の仕様差(登録可能な辞書数、1辞書あたりの文字数、同時指定可能数、ファイル配置の要否)まで踏み込んで整理し、プロトタイプ実装時に実際の音声を比較して最終決定する方針としました。
音声はファイル化して配信する
生成した音声をmp3などのファイルとして配信する構成とすることで、一時停止・再開に対応でき、API利用料も1回限りに抑えられます。
成果RESULT
実装形態とTTS方式を、比較表に基づいてお客様と合意したうえで着手
専門用語の読みをカスタム辞書で補正できる構成を選定
プロトタイプをWebアプリとしたことで、ストア申請を挟まずに音声品質の検証へ進めた
※現時点ではプロトタイプ版の構築まで。




新しい技術を使う案件では、「何を選んだか」より「なぜそれを選んだか」を残すことが後々効いてきます。今回はネイティブ/Webの選択、TTS方式3種類の比較、オンラインTTSサービス3社の比較と、3段階の比較表を作成しました。特に専門文献では読み間違いが致命的になるため、カスタム辞書の仕様差まで踏み込んで検討しています。